よく破産は、人の経済的な死に例えられます。
しかし、破産は、死ではありません。むしろ、経済生活の再生の機会を確保するものです。
このことは、破産法1条の目的規定に次のように、はっきりと定められています。
「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」(枠は、当職が付けました。)
また、破産ほど誤解されているものも少なくないかと思います。
破産に関する誤った迷信に惑わされている方もかなり多いのが実情です。
そして、悲しいことに、厚生労働省による「自殺の統計」において、日本で年間2万人以上の方が自殺をされていて、自殺原因の2番目に多いのが、経済問題によるものと言われています。
自ら命を絶たれた方が、破産の迷信に惑わされず、破産を選択し経済生活の再生の機会をがあれば、失わずに済んだ命が多くあるのではないでしょうか。
破産は、死ではなく、再生のためのものなのです。破産が人の命を救う可能性もあるのです。
私としても、破産について、正しい知識を持って、適切な選択を多くの方にして頂きたいと思い、破産について啓蒙するための塾として、この「弁護士滝悠樹の破産塾」を設けさせて頂きました。
破産について、適切に理解し、自己破産する勇気を持って頂ければと思います。
1 破産すると、財産全部を手放す必要がある
法律で、差押禁止とされている財産まで、手放す必要はありません。そのため、生活に最低限度必要な財産は残されることになります。
また、場合によっては、破産者の生活のために確保が認められる財産の範囲を拡張してもらえる余地もあります。
2 破産すると、家族に迷惑がかかる
借金について破産される方とご家族の法律関係によっては、迷惑がかかるとは限りません。
もっとも、ご家族の方が破産者の保証人である場合、破産後は、債権者が保証人に対して、保証債務の履行請求として、金銭支払請求が行われることになると思われます。
3 破産すると、会社を辞めなければならない
破産による職業資格制限があるものは、弁護士などのいわゆる士業や警備員などと限定的です。
そのため、破産したことのみを理由に会社が、従業員を解雇することはできません。
4 破産すると、退職金も全部取られてしまう
退職金のうち、4分の3は、差押禁止財産であり、破産者が確保することが認められています。
また、破産者の退職が迫っている場合などを除き、将来退職金が支給されない可能性も考慮して、退職金の評価額は退職金見込額の8分の1とされています。
つまり、破産者の退職後の生活保障のため、破産者が確保できる退職金の範囲を拡張するようにしています。
5 破産すると、ずっと借金やローンが組めなくなる
信用情報である、いわゆるブラックリストに5年から7年程度は、記録されてしまいこの期間は貸金業者から借金が出来ませんが、借入が永遠に不可能になるわけではありません。
6 破産すると、破産したことを皆に知られてしまう
破産者の債権者にも通知はなされ、官報に破産者の氏名と住所が掲載されますが、官報を見る一般人は、ほぼ皆無といえます。
また、破産事件を扱う法律事務所のスタッフは、依頼者である破産者との間で守秘義務を負います。
そのため、破産したことは、日常生活上はほとんどわかりません。
7 破産すると、選挙権がなくなる
破産しても、選挙権は制限されません。
8 破産すると、破産したことが、戸籍や住民票に出てしまう
破産しても、戸籍や住民票にはのりません。
9 破産すると、市町村の破産者名簿に載ってしまう
現在の破産法の施行後は、従前の運用を変更し、免責を得られないかか方など破産者名簿に掲載される場合はかなり限定的になりました。
そして、弁護士が適切に個人破産免責申立てをして、免責を得られないことはほとんど無いことから、ほとんどの方は載らないことになります。
(なお、この点は、弁護士でも誤解をしている人もいるようです。根拠となる通達については、山田明男弁護士に教えて頂きました。)
10 破産すると、郵便物も他人に見られてしまう
破産管財人が選任されない破産事件の場合には、下記に述べます破産管財人によって郵便物が見られることはありません。
破産申立てをされている方に、不明朗な点や不適切な点がある場合などに、裁判所は破産管財人を選任し、破産管財人が問題に対応することになります。
そして、この破産管財人によって破産者の郵便物が開封されることになりますが、一定の期間は仕方がないといえます。
11 破産すると、引っ越しも出来ない
破産者は、破産手続中の住居制限がありますが、通常の個人破産事件であれば、長期間の住居制限となることは多くありません。
また、引っ越しが必要な場合は、裁判所の許可を得て、引っ越すことが可能です。
12 破産は、世間体が悪い
冒頭に述べたとおり、破産は経済生活の再生の機会を確保するものです。返済できない借金をずっと背負っていることの方が、問題ではないでしょうか。
また、経済問題を原因とする自殺者も多いことから、世間体よりも重視すべきものがあると思います。人の命は、お金にかえられませんので、この場合はやむを得ないと私は思います。
13 ギャンブルが借金原因だと、破産免責できない
個人の自己破産事件の場合、破産手続後に、免責のための手続きがあります。
そして、免責を得る、正式には、免責許可決定が確定すると、破産者は、免責対象にならない負債を除き、全ての借金・負債の支払いを法律上免れることになります。
破産法252条1項に、借入を免れることが出来ない免責不許可事由として、次のものがあります。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
ギャンブルが原因の借金の場合は、4号に該当する可能性があり、該当するとなった場合は免責不許可となります。
もっとも、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可決定をすることができるとして、裁量で免責の余地を認めています(裁量免責と言います)。
そのため、裁量免責を得ることが出来れば、ギャンブルが原因の借金の場合でも、免責されます。
「弁護士費用」の参照をお願いします。
1 法律相談
相談者の経済状況や、債権者の氏名と人数、借金総額など自己破産に必要な事情をヒアリングしします。
2 弁護士費用の説明、受任契約の締結、委任状の作成
自己破産事件につき、弁護士費用を説明させて頂き、当事務所へ破産事件の依頼をされる場合は、委任契約書と委任状を作成することになります。
3 各債権者への受任通知の発送
各債権者へ当事務所の弁護士が事件を受任したことを通知するとともに、債権者に債権額などを開示してもらいます。
4 破産免責申立ての準備
申立書などの作成や、破産免責申立てに必要な書類の収集や作成をすることになります。
家計の収支状況を明らかにする書類も作成して頂きます。
5 裁判所へ破産免責の申立て
裁判所へ破産免責の申立書と必要資料一式を提出します。
6 破産手続開始決定
(1)問題の無い事案は、同時廃止決定が行われ、破産手続が終結し、免責に向けた手続きに移行します。
(2)問題のある事案は、裁判所より、破産管財人が選任され、破産管財人の調査などに破産者は協力することになります。
破産管財人に対して、破産法上、破産者は調査に協力する義務があります。また、破産管財人は、免責について意見を裁判所に述べ、それが裁判所の判断の参考にされますので、破産者は誠実に対応することが免責のためには重要となります。
7 免責許可決定
破産者に破産法に定めてある免責不許可事由が無い場合や、免責不許可事由があっても、裁判所が裁量的に免責すべきと判断した場合は、免責許可決定がなされます。
この免責許可決定が確定すると、破産者は免責対象とならない負債を除き、全ての借金・負債の支払いを法律上免れることになります。
ここまで読んでい頂きありがとうございます。
自己破産については、当事務所でも扱っています。自己破産を考えている方が、当事務所を選んで頂ければうれしいことですが、破産を選択すべき方が、他の法律事務所でも結構ですので、適切な選択をしていただく一助になれば幸いです。
弁護士 滝 悠樹